2世紀末から17世紀にかけてベトナム中部から南部沿岸で繁栄した海洋国家チャンパ王国。12世紀にはアンコール王朝の土地を占拠したほどの勢力を持つ脅威の存在でした。また、日本では奈良時代に林邑(りんゆう=チャンパ)から雅楽がもたらされた8つの曲は、「林邑八楽」(りんゆうはちがく)と呼ばれ、曲と舞は現在も伝承されています。
ホイアンから車で90分ほど走った密林に囲まれたミーソン遺跡は、チャンパにおける聖なる山のふもとに70を超える煉瓦造りの塔が静かに佇んでいます。建築様式からも、チャンパ王国の優れた技術が見て取れる貴重な遺跡なのですが、ベトナム戦争時代に民家の集合と間違えられて爆撃され、多くが破壊されています。それでも、残った石像や壁に施されたアプサラや信仰したヒンドゥーの神々の彫刻は今も物言わず語っています。
ダナンにある開運スポットで人気の五行山にもチャンパの足跡が残っています。中腹あたりにある「玄空関」と書かれた古い門をくぐった先にあるホアギエム洞窟の奥に古い祭壇があり、磨崖仏の観音像が祀られています。ここは、もともとチャム族の寺。祭壇の足下には、ヒンドゥーの神様のレリーフが残っています。
また、ダナン市街地にあるチャム彫刻博物館は、チャンパ王国の貴重な遺跡を保存するベトナム唯一の博物館。中部周辺から出土した450の彫刻や芸術品を展示保存しています。さらに、一部の展示品は直に触れて感じることができる素晴らしい博物館。
かつてベトナム沿岸一帯を支配し、そして消えたチャンパ王国。そのいにしえの軌跡をたどれば、私たちの知らないベトナムの風景が見えてくるでしょう。
五行山
住所:2 Huyen Tran Cong Chua, Hoa Hai, Ngu Hanh Son, Da Nang
入場料:40,000 VND
営業時間:07:00 – 17:30
チャム彫刻博物館
住所:No. 02, 2-thang-9 Str, Da Nang City
営業時間:7:00- 17:00
入館料:60,000 VND